店主について

小野健二(おのけんじ) ─ 神楽坂ワインバー 六花 オーナー

小野健二は、神楽坂ワインバー六花(Rokka)のオーナー。24年にわたり飲食業界で経験を積み、9店舗でワイン・料理・接客・店舗運営の現場経験を重ねてきました。お客様一人ひとりの時間に寄り添うワイン提案を大切にしています。

六花は、ワインが好きだったから始めた店ではありません。
人と向き合い、時間を共有し、相手の表情が変わる瞬間に喜びを感じる。その経験を20年以上積み重ねた先に生まれたワインバーです。

六花のオーナーである小野健二は、経営・商学を学び、当初は家業である建設業に携わる道を考えていました。将来、経営者になるためには、まず現場を知らなければならない。そう考え、学生時代に働いていた建設関連会社へ卒業後も勤務し、実際の現場で経験を積みました。
その後、思いがけない縁から、飲食店の運営を学ぶ機会を得ることになります。

飲食業との出会い

飲食の道に進んだきっかけは、決して最初から思い描いていたものではありませんでした。実店舗での経営経験を積んでおくようにという会長の勧めで、焼肉チェーン「牛角」の店長として入社することになったのです。

当時、飲食業やお酒に特別な興味があったわけではありませんでした。しかし、右も左も分からないまま店舗に立ち、お客様と向き合う中で、少しずつ気持ちが変化していきました。お客様が笑顔で帰られる姿。スタッフと一緒に、店に一体感が生まれていく過程。その一つひとつに魅力を感じ、飲食業の奥深さに惹かれていきました。

まだこの時点では、家業を継ぐという将来への迷いを抱えたままでしたが、飲食の楽しさに触れた最初の経験として、今も大切な原点になっています。

ワインとの出会い

牛角での経験を経て、ホテル内のカジュアルフレンチ「イルドテラス」へ異動し、夜営業のマネージャーを任されました。

それまでの焼肉店では、お客様との距離が近い、会話中心の接客を大切にしてきました。しかしこの店舗では、ジャケットを着用したフォーマルなサービススタイルの中で、落ち着いた所作や空間そのものを意識したレストランサービスを、一から学び直すことになりました。人懐っこい距離の近さと、丁寧に整えられた所作。この対照的な二つの経験は、今も六花の接客の中に息づいています。

そして、この店舗での経験が、今につながる大きな転機になります。

レストラン業務を通じて、初めてワインという飲み物に本格的に触れる機会を得たのです。右も左もわからないまま、最初に手に取ったワインの本には、「常に舌を乾かすな」というようなことが書かれていました。それを忠実に守り、出勤前も、帰宅してからも、とにかくワインを口にする日々を送るようになりました。

当時はまだ、ワインが好きというより、勉強のために飲んでいたというのが正直なところです。それでも続けるうちに、少しずつ、自分の中で興味に変わっていく感覚がありました。

その後、勤務先から本社で社長のもと経営を学ぶ機会を提案されました。将来経営者になることを考えれば、とても貴重な経験になることは分かっていました。しかし、その時にはすでに「もっとワインを深く学びたい」という気持ちが強くなっていました。まだ家業を継ぐことも視野にあった時期で、相当に悩みましたが、経営を学ぶ道ではなく、ワインを学ぶ道を選び、退職する決断をしました。

この選択が、その後20年以上にわたりワインと向き合い続ける人生の始まりになりました。

クラッティーニ ─ イタリアンレストラン サブマネージャー

ワインをより深く学ぶため、約600種類のワインを扱うイタリアンレストラン「クラッティーニ」へ移りました。

産地、品種、生産者、ヴィンテージ。本で得る知識だけではなく、実際に多くのワインに触れながら、一つひとつの違いや個性を理解していきました。料理との組み合わせ、お客様へどのように提案するか。ワインが料理や会話、その場で過ごす時間を豊かにする存在であることを学びました。

また、新店舗の立ち上げメンバーとして、オープン準備や店舗運営にも携わりました。

洋食バル マメゾン ─ 立ち上げメンバー

その後、イルドテラスで共に働いていた先輩から声をかけてもらい、低迷していた洋食店の業態変更に立ち上げメンバーとして参加しました。

店名や一部料理を引き継ぐという制約がある中で、洋食店からワインを楽しめるバル業態への転換に取り組みました。この時、初めて積極的にワイン試飲会へ参加し、自分自身で選び、納得したワインをお客様へ届ける経験をしました。自分が選んだ一本を、お客様が楽しんでくださる。その喜びは、現在の六花につながる大きな原点の一つになっています。

また、共に働いたオーナーの姿からも学びを得ました。どれほど忙しい状況でも笑顔を絶やさず、丁寧な接客を続け、常に周囲へ目を配る。その姿勢は、今も接客の指針になっています。

ナチュラルワインビストロ グレープガンボ ─ サービススタッフ

マメゾンで、自分が選んだワインをお客様へ届ける喜びを知った後、当時好きだったナチュラルワインを学ぶため、フレンチベースのビストロ「グレープガンボ」へ入りました。

まだ一般的ではなかったナチュラルワイン文化の先駆け的な存在で、銀座四丁目交差点からほど近い石畳の路地にある一軒家に、お客様、スタッフ、音楽、ワイン、料理が一体となった独自の空気がありました。

ここでは、それまでとは違う接客の形を学びました。以前の店舗では積極的に声をかける接客を大切にしていましたが、グレープガンボでは、お客様が自然に話しかけたくなる空気を作ることの大切さを知りました。

そして、この頃に飲食業で生きていく覚悟が固まりました。それまでは、大学まで出してもらいながら家業を継がないことへの迷いもありました。しかし、親が店に来てくれた際、楽しそうに働く姿を見て、「飲食が合っているのだから、この道で生きていけばいい」と言ってくれました。その言葉によって、長く迷っていた気持ちが決まりました。

オザミワールド株式会社 ─ スペインバル バニュルス上野店

飲食業を生涯の仕事として向き合う覚悟を決めた後、次に学びたいと思ったのは、バルという文化でした。

ワインを囲んで多くの人が集まり、会話を楽しみながら過ごす。その空間に大きな魅力を感じ、将来自分が店を持つなら、人が自然と集まり、楽しい時間を過ごせる場所を作りたいという思いがありました。

そこで、スペインバル文化を学ぶため「バニュルス上野店」へ入社。50席以上の大型バル店舗で、多くのお客様が行き交う活気ある空間づくりを経験しました。

DSクロス株式会社 ─ 東銀座 ビストロ キッチンスタッフ → 店舗マネージャー

将来自分の店を持つことを考えた時、料理についても深く理解する必要があると考えました。以前の店舗で取引のあったワイン輸入会社社長の紹介により、ビストロのキッチンスタッフとして勤務を始めました。

肉料理を担当し、仕込み、調理、盛り付けなど、料理を提供するための基本を現場で学びました。素材の状態、火入れによる味わいの変化。サービス側から見ていた料理を、作り手側の視点から理解することができました。

有限会社たるたる ─ 銀座ワインバー たるたる 調理責任者

その後、ワインと料理を一緒に提供する店舗づくりをさらに学ぶため、銀座のワインバー「たるたる」へ入社しました。

小規模なワインバーだったため、調理責任者として料理を担当しながら、ワインの提供や接客など、店舗全体に関わる業務を経験しました。ランチ営業のない環境だったことで、ワインについて深く向き合う時間も確保でき、テイスティングを重ね、産地、生産者、品種、ヴィンテージなどを、知識だけではなく自分自身の感覚として理解していきました。この頃から、年間1万種類以上のワインを試飲する習慣が始まり、今も続けています。

株式会社HIROSE ─ イタリアン 神楽坂しゅうご マネージャー

これまで積み重ねてきたワイン、サービス、料理への経験をさらに深めるため、神楽坂のイタリアン「しゅうご」へ入社しました。

お客様一人ひとりと向き合い、その方に合わせたワイン提案を大切にしてきました。ワインリストから選んでいただくのではなく、会話を通じて、その日の気分や好み、過ごしたい時間を理解する。そして、その方にとって心地よい一本を提案する。ワインを楽しんでくださるご常連のお客様が、少しずつ増えていく。それは大きな喜びでした。

料理についても、長年経験を積んだ料理人の仕事を間近で見ることで、多くのことを学びました。素材への向き合い方、火入れの繊細さ。良い料理とは何かを知ること。その価値を理解できたことは、六花を作る上で大きな経験となっています。

六花を作る理由

20年以上にわたり、さまざまな飲食店で経験を積んできました。店舗運営、サービス、ワイン、料理――それぞれの場所で学んだことは違いますが、すべてに共通していたのは、店とは料理や飲み物を提供するだけの場所ではなく、人と人の時間を豊かにする場所だということです。

六花は、これまで積み重ねてきたすべてを詰め込んだ場所です。そしてこの店の名前には、10年間家族として共に暮らしたロッカへの想いが込められています。ロッカとの時間から教えてもらったことについては、名前に込めた想いに綴っています。

ご予約はこちら